アートを纏う、秘密の止まり木。村上隆プロデュース「純喫茶ジンガロ」で過ごす非日常

中野。多様なカルチャーが混在し、絶え間ないエネルギーを放つこの街に、時が止まったかのような、それでいて未来的な空間が存在することをご存知だろうか。
目指すは、サブカルチャーの聖地・中野ブロードウェイ。その2階にひっそりと佇むのが、今回ご紹介する「純喫茶ジンガロ」だ。
ここが単なるレトロ喫茶でないことは、入口のネオンサインを一目見ればわかる。世界が注目する現代美術家、村上隆。彼が率いるカイカイキキがプロデュースを手掛けたと聞けば、アートやデザインに敏感な大人たちは、がぜん興味をそそられるはずだ。
「今度の週末、どこか面白いところない?」 そんな会話の切り札になるであろう、この特別な場所。今、感度の高い東京人が密かに集う、アートな純喫茶の扉を、そっと開けてみよう。
懐かしさと未来が交差する、唯一無二のデザイン空間
一歩足を踏み入れると、そこはカオスなブロードウェイの喧騒とは隔絶された異空間。ヴィンテージ感漂うレザーソファ、柔らかな光を落とす色ガラスのシェード、そして足元に広がるのは、村上隆のシグネチャーである「お花」が織りなすサイケデリックな絨毯。
特筆すべきは、客席のテーブルだ。すべてが70年代に一世を風靡した、懐かしのビデオゲームテーブルなのである。『パックマン』や『ドンキーコング』が埋め込まれたテーブルは、それ自体がポップアートのよう。専用コインを手にすれば、童心に返ってゲームに興じることもできる。
設計施工は、恵比寿横丁などを手掛けた浜倉的商店製作所。昭和の純喫茶が持つ普遍的な心地よさと、村上隆の大胆なアートが見事に融合し、「レトロフューチャー」という言葉がこれほど似合う場所は他にないだろう。
ここは単なるカフェではない。空間そのものがアート作品であり、訪れる者を物語の登場人物にしてくれる、体験型のギャラリーなのだ。
アートなのは空間だけじゃない。心躍る、可憐なメニューたち
この空間で供されるメニューもまた、息をのむほどにフォトジェニックだ。
まずオーダーすべきは、店のアイコンとも言える**「お花プリン」**。 銀の器に鎮座する、昔ながらの固めプリン。その上には、愛らしい「お花」のクッキーがちょこんと乗せられている。ほろ苦いカラメルと、なめらかで濃厚なプリンのマリアージュは、まさに王道の味わい。見た目の可憐さとのギャップに、思わず頬が緩む。
色鮮やかな**「クリームソーダ」**も外せない。シュワシュワと弾けるソーダの海に浮かぶのは、これまた「お花」の形をしたアイスクリーム。溶けていく様さえも美しく、ただの飲み物というよりは、一つの作品を鑑賞しているかのような気分にさせてくれる。
小腹が空いているなら、**「お花パンケーキ」やテイクアウトも可能な「マフィン」**を。カイカイキキの製菓ブランド「となりの開花堂」が手がける焼き菓子は、味も本格的。アートな空間で、アートなスイーツを食す。これ以上ない贅沢な時間だ。
「ジンガロ」で過ごす、上質なひととき
この場所での過ごし方は、人それぞれだ。
一人の時間を満喫するなら、カウンターで。 目の前のアートワークを眺めながら、物思いに耽る。日常のタスクから解放され、思考を遊ばせるには最適な場所だろう。
感度の高い友人と訪れるなら、ゲームテーブルで。 アートやデザイン談義に花を咲かせながら、懐かしいゲームに興じる。知的な刺激と遊び心が同時に満たされる、稀有な体験がここにある。
もちろん、ここはデートの切り札にもなる。 「こんな店、よく知ってるね」。パートナーからのそんな言葉を、きっと引き出せるはずだ。中野ブロードウェイで宝探しをした後に立ち寄る、というストーリーも粋である。
中野という街の深淵に、突如として現れるアートなオアシス、「純喫茶ジンガロ」。 ここは、ただコーヒーを飲む場所ではない。五感を研ぎ澄まし、日常をリセットするための特別な「止まり木」だ。
なぜ人は、美しいものに惹かれるのか。その答えを探しに、このレトロでフューチャーな喫茶店を訪れてみてはいかがだろうか。きっと、忘れられない時間があなたを待っている。
店舗情報 | Store Information
🚃アクセス
JR中央・総武線/東京メトロ東西線「中野駅」北口より徒歩約6分
東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ 2F
🕰️営業時間
12:00~19:00 (L.O. 18:30)
定休日
火曜日・水曜日(※不定休あり。公式Instagram参照)
Instagram
@cafe_zingaro